ニューヨーク コーヒー豆探訪 2021/11月号「ポルトリコ( Porto Rico Importing Co.)」

BEANS

このコーナーでは、コーヒー大好きニューヨーク在住日本人ブロガーのSky(筆者)が、ニューヨークにあるロースターを中心に、毎月気になるコーヒー豆をピックアップ。ロースターの紹介とともに、実際にそれらの豆を購入し、自宅でドリップコーヒーを淹れ、味についての感想をお届けしていきます。

今月はPorto Rico Importing Co.の「House Blend」が満を持しての登場です!

Porto Rico Importing Co.の紹介(HP参照)

今月紹介するPorto Rico Importingは、ニューヨークのコーヒー愛好家たちに1世紀以上に渡り愛されてきた、Longoファミリーが経営する歴史ある名店です。

Porto Rico Importingのコーヒー豆は、ニューヨークのスーパーでも広く流通しており、商品棚に並んでいるのを日常的に見かけます。またグルメ雑誌等でも、ニューヨークのコーヒー好きがコーヒー豆を調達するお店として紹介されているのを見て、グリニッジビレッジにある店舗にいつか行ってみたいと機会をうかがっていました。

ついに先月、店舗を訪れることが出来たので、お店の歴史とともに紹介します。

お店の起源は1900年代初頭にさかのぼります。1920年代にかけて多くのイタリア移民がグリニッジビレッジに流入してきました。1900年頃、現在の店主であるPeter Longo氏の祖父母も移民として到着し、Bleeckerストリート201番地(201 Bleecker St.)にイタリアンベーカリーを開店します。当時はほとんどの人がオーブンを持っていなかったため、パンやピザに加え、ターキー(七面鳥)、ハムも販売していました。

そして1907年、通りを挟んでお店の向かい側にある195番地に、Patsy Albanese氏がPorto Rico Importing Companyを開店し、新しくやってきたイタリア移民に、香辛料、シロップ、乾燥きのこ、オイルなどの日常必需品を販売し始めました。もちろん商品にはコーヒーと紅茶も含まれていました。

1958年、Patsy Albanese氏は年老いたことから、Peter氏の父親(2代目)に、自分のお店を買わないか?と持ちかけます。その時父親はベーカリーを継いでいたのですが、早朝から長時間労働を強いられるパン屋生活に疲れてきており、両家族にとってタイミングが良い具合に重なります。父親はベーカリーを賃貸に出すことにし、Patsy氏からPorto Rico Importing Companyを買取り、Patsy氏は引退しました。

当時グリニッチビレッジには、ボヘミアン、イタリア人、ビート詩人、アーティスト達など、多様性溢れる人々が集まりハーモニーを奏でるようになります。食べ物と同様コーヒーの需要も高まります。彼らが旅行から戻りお店に立ち寄っては「旅先でこんな素晴らしいコーヒーを飲んだ。お店に取り寄せてくれないか?」と尋ねるようになります。好奇心旺盛なPeter氏の両親は、顧客との会話やコーヒー豆のサプライヤーを通じてリサーチを行い、要望に応えようと努力してきました。こうしてグリニッジビレッジの発展とともに、お店ではコーヒー豆のブレンドの種類や品揃えが増えていきました。

1965年には賃貸に出していた201番地のベーカリーの店主が引退するということで、Porto Rico Importing Companyを201番地に移すことにしました。これが現在お店がある住所になります。

現在の店主Peter氏は3代目で、大学を卒業した1973年に、家業の大部分を担うようになります。コーヒーにまつわる教育は父親から直伝されましたが、いくつか変わったこともあります。ひとつはコーヒーの焙煎施設をBleecker通りのお店からブルックリンに移し、殆どの豆をブルックリンで焙煎しています。ただコーヒー豆の新鮮さを保つために、需要を予測し必要な分だけを毎朝焙煎するという姿勢に変わりはありません。これはベーカリーにも通じるとのこと。

先に紹介したBleeckerストリートの他に、ウクライナビレッジ(40 1/2 St Marks Pl.)、ローアーイーストサイドのエセックスマーケット内(88 Essex St.)、ブルックリン (636 Grand St.)にお店を構えています。

以下店内の様子です。

まず店内に入ると沢山のコーヒー豆バックがお出迎え。ハロウィーン前だったので、このデコレーション。入口からUの字に並んで、順番を待ちます。私は土曜日の午後に訪れ、7〜8組が先に並んでいました。

コーヒー豆のラベルの色で産地がカテゴリー分けされています。黄色は「中央・南アメリカ」、紫色が「アジア・アフリカ・島々」、緑色が「オーガニック」、赤色が「フレーバーコーヒー」、水色が「デカフェ」と分けられています。シングルオリジン(単一生産地)の豆もたくさん揃っています。

焙煎の深さもライトからイタリアンエスプレッソまで、合計7段階あります。 豆の産地だけでなく、焙煎の深さごとにカタログに商品情報が載っています。

(上記写真引用: カタログP10-11 https://issuu.com/longocoffee/docs/prcat2021-web_2/10

種類が多すぎて、お店で選ぶのが大変かも知れないので、事前にホームページカタログを見て狙いを定めておくのも良いですし、お店の人に好みを伝えてお勧めを聞いても良いでしょう。

やっと自分の番!レジがある場所で、スタッフに希望の豆と重量を伝え、バックに豆を入れてもらいます。その場で豆を挽いてもらうことも可能です。

店内にはコーヒースタンドもあり、カップ入りのコーヒーをテイクアウトすることも出来ます。

House Blend

現在の店主の父親がFromme’s Coffee Companyにいた頃に生まれたブレンドで、お店のライトローストブレンドの中でも一番の人気とのこと。確かに、先に並んでいた他のお客さんも購入していました。

特徴は「強さはミディアムで、素晴らしいフレーバーと酸味」とのこと。豆はモカジャワ島コロンビアブラジルの4種をブレンド。

何より嬉しいのがその値段。1lbで$11.99ドル(2021年11月現在)で、Port Rico Importingの豆全体に言えるのですが、とても良心的な価格で売られています。多くのサードウェーブ系コーヒー豆が半分のサイズ(1/2lb)にも関わらず$14ドル前後で売られていることを考えると、お財布に優しいです。

(写真: 実際の豆)

コーヒーを飲んだ感想

浅煎りの爽やかな酸味をすっきりと楽しみたかったので、ドリッパーはHario V60を選択。(参照:ドリッパーの違いについての過去記事はこちら

コーヒーを口に入れた瞬間、クセのないりんごのような酸味が第一波として口の中に広がります。そして次に甘い余韻が少し残ります。酸味というと「豆の鮮度が悪いのでは?」とネガティブなイメージを持つ方もいるかも知れませんが、このHouse Blendのように、良いコーヒー豆の酸味は嫌な気分にならず、攻撃的ではありません。むしろ心地よいです。

この酸味→甘みという流れは、先月まで紹介してきたコーヒー豆にはなかった特徴です。苦味はほとんどありません。

とてもまろやか酸味なので、寝起きの体をシャキっとリフレッシュさせたい朝に最適。ザ・アメリカなコーヒーです。苦味を抑えたライトな定番コーヒーをお探しの方に是非お勧めできると思いました。少し重たくしたければ、豆を細挽きしてみたら苦味が出るかもしれません。

先月までのサードウェーブ系コーヒーショップとは一線を画す、その名の通り輸入食料品店発祥のコーヒー豆屋さん。1世紀以上にわたる歴史と、多様な豆とブレンドを揃え、鮮度、価格へのこだわりも高い。なるほど、ニューヨーカーからの信頼が厚いのも納得しました!

Sky満足度 ☆4.5 (5点中) りんごのようなクセのない優しい酸味が朝にぴったりのコーヒー。コスパが良いのも嬉しい!お気に入りコーヒー豆リストに登録です。

読んでいただきありがとうございます。次回12月のコーヒー豆をお楽しみに!

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