ニューヨーク コーヒー豆探訪 2022/5月号「マイティオーク・ロースター(Mighty Oak Roasters)」

BEANS

このコーナーでは、ニューヨーク在住日本人ブロガーのSky(筆者)が、ニューヨークにあるロースターを中心に、毎月気になるコーヒー豆をピックアップ。ロースターの紹介とともに、実際にそれらの豆を購入し、自宅でドリップコーヒーを淹れ、味についての感想をお届けしていきます。

今月紹介するのはMighty Oak Roastersの「House Blend」です。

Mighty Oak Roastersの紹介(HP参照)

Mighty Oak RoastersのあるクイーンズのAstria(アストリア)地区は、イーストリバーを挟んでマンハッタンのアッパーイーストサイドの向かいに位置するエリアです。マンハッタンからは、地下鉄N、W線で乗り換えなしで訪れることができます。

多様な人種が住むアストリア地区は、低層のレンガ作りの住宅街の中に、世界各国の料理を提供するレストランが立ち並ぶ、グルメを惹きつける町です。特に1960年代に急増したギリシャ系移民の影響で、沢山のギリシャ料理レストランがあることでも有名です。

そんなアストリア地区に2018年にオープンしたMighty Oak Roastersは、コーヒーの原産地から人々がコーヒーを口に運ぶ瞬間まで、道徳的に正しいコーヒー豆調達と、環境へポジティブな影響をもたらすこと通じて、最高品質のコーヒーを届けることをコミットメントとしています。

世界中から調達されるコーヒー豆は、そんなMighty Oak Roasterのコミットメントに従い、環境、経済、地域の持続可能な発展を大切にする生産農家または輸入業者から取り寄せています。

特に生産農家との直接取引(ダイレクトトレード)では、農家と適正価格で取引ができるだけでなく、パートナー関係の構築により品質の優れたコーヒー豆を仕入れることにもつながっています。

(メニュー:コーヒー以外にもチャイや抹茶ラテなども充実。窓口でコーヒー豆も購入できる。)

そんなMighty Oak Roasterの最大の特徴は、石油由来燃料ではなく、薪(まき)を燃やしてコーヒー豆を焙煎すること。薪で焙煎する一番の理由は「香り」のため。薪を燃やして生まれる熱は、使用される木材に応じて、コーヒー豆に繊細な香りづけをする役割を果たします。ただし想像するようなモクモクした煙の香りではありません。

そしてもうひとつの理由は、環境への配慮です。薪を燃やして適切に焙煎すれば、石油由来燃料による焙煎よりも、環境への影響が大幅に少なくなるとのこと。非常に少ない量の広葉樹木の薪で、30ポンドのバッチを焙煎することができます。

且つこれらの薪は、アストリアにあるお店の半径50マイル以内で、主に暴風雨による被害や、自然自由で伐採された樹木を、地元の樹木医の協力のもと調達したものです。樹木を燃料として再利用することの利点は、生態系に「新しい」炭素を生み出さないことです。

地中の奥深くから石油を抽出することは、何百万年もの間閉じ込められてきた炭素を再び待機中に放出することになり、自然の均衡が崩れてしまうのです。

また、焙煎時に排出される煙から、あらゆる粒子が大気中に放出されるのを防ぐため、従来のアフターバーナー(再燃料装置)ではなく、再利用可能で非常に高性能なろ過装置を使用しています。

現在でもカフェスペースは閉まったままで店内飲食はできませんが、カウンター越しにテイクアウトの注文を受け付けています。少し歩いてAstria Parkでゆっくりコーヒーをいただくのもおすすめです。

(本記事執筆中の2022年5月現在でも、カフェスペースは閉鎖中のままですが、マスクをした猫の看板がかわいいです。)

House Blend

豆の産地は南米コロンビア中米のコスタリカです。

コロンビアは筆者の好きな産地の一つでもあり、「今月のコーヒー豆」のコーナーでも何度か登場していますが、コスタリカ産豆は初めての登場だと思います。コスタリカ政府はアラビカ種以外のコーヒー豆の生産を禁止する法律を制定するなどして、国をあげて品質の高いコーヒーの安定供給に努めています。

そんなコスタリカの中でも今回House Blendで使用されている豆は、コーヒーの産地として有名なコTarrazú地方で栽培されており、標高は2,000メートルとのこと。高地で栽培された豆は、昼と夜の寒暖差によって生豆が引き締まり、美味しいコーヒーになると言われています。


コーヒー豆はウォッシュド(Washed)加工されており、焙煎度合はミディアムで、特にドリップコーヒーやフレンチプレスに向いているとのこと。もちろん前述した通り、混合広葉樹の薪を使って焙煎されています。

味のプロファイルは「レッドベリー、チョコレート、シトラス(柑橘類)」とのこと。どうやらフルーティーな酸味と甘みの両方が期待できそうです。そして、薪で焙煎された豆はどんな香りなのでしょうか?試飲がとても楽しみです。

(写真: 実際の豆)

コーヒーを飲んだ感想

購入する約1週間前に焙煎されたばかりの豆をゲットしました。パッケージを開封した途端に、なんとも言えないコーヒー豆の香ばしい香りが広がります!

まずコーヒー豆の見た目の違いとして、ミディアムローストにしては豆の色が濃い茶色だと感じました。

いつも通り筆者愛用のコーヒーミル「Breville Smart Grinder Pro」にコーヒー豆をセット。ドリップコーヒーに最適な中挽きにします。ドリッパーは最近定番となったHario V60を選択。(参照過去記事:筆者愛用のコーヒーミルドリッパーの違いについて)

コスタリカ産豆の酸味を楽しむため、コスタリカ産の豆の最適湯温とされている82-84℃くらいのお湯でゆっくりドリップします。

コーヒーを口に含むと、香ばしい香りが鼻に抜け、うっすらと樹木の香りを感じることができます。まるで暖炉の前、または森の中でコーヒーを飲んでいる気分になります。リラックス効果高い!冒頭でも紹介したように煙のような焦げ臭い香りではなく、絶妙な香りの残り具合です。

味わいとしては、酸味よりもカラメルのような甘み、そして心地よい苦味がバランス良く現れ、最後に少し酸味も。Harioのドリッパーを使うとかなりクリアな味わいになり、少し物足りなさも感じたので、コーヒー豆を多めにする、またはゆっくりドリップできる台形型ドリッパーを使用すると、重厚感を与えることができると思います。

このブレンドの一番の長所は「香り」、そして三味(甘み、苦味、酸味)の好バランスと言えるでしょう。コーヒーを口に含んだ時に鼻に抜ける微かな木の香りを感じながら目を閉じると、忙しい日々に平穏はひとときが訪れます。味わい自体はそれほどパンチは強くないので、モーニングコーヒーに最適かと思います。

Sky満足度 ☆4.0 (5点中)  なんと言っても薪で焙煎することにより生まれる絶妙な香りがこのコーヒーの希少性を高めています。味わいはもう少し甘みが強いものが筆者好みですが、甘みと爽やかな酸味、心地よい苦味が良いバランスで主張し過ぎず、一番の売りである香りを邪魔しないところが良いです。お気に入りコーヒーに登録です。

最後まで読んでいただきありがとうございます。次回は6月となります。どうぞお楽しみに!

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