自宅でハンドドリップコーヒーを淹れるのが大好きな筆者ですが、ある日たまたま立ち寄ったBlue Bottle Coffee(ブルーボトルコーヒー)で販売されていたコーヒー抽出キットに目に止まりました。
以前から陶器のドリッパーがひとつは欲しいと思っていたことに加え、セットに含まれる器具のデザインの良さに心惹かれました。さらに、お店で使用されているものと同じ=おうちでブルーボトルコーヒー気分が味わえる!という単純な動機から即決で購入することに。
自宅でわくわくしながらキットを開封し、同封の小冊子に目を通すと、ブルーボトルコーヒーの哲学は日本の喫茶文化の影響を大きく受けていることや、抽出器具にも日本のものづくりの力が結集していることがわかったのです。
日本人と誇らしい気分になりブルーボトルコーヒーに今まで以上の親近感が湧きました。そして実際に抽出キットを使用してみて、誰でも自宅でおいしいコーヒーを淹れることができる素晴らしい製品であることがわかったので、ぜひ本ブログで魅力を紹介したいと考えました。
自宅でおいしいコーヒーを抽出したい方、ブルーボトルコーヒーが大好きな方、ギフトをお探しの方などに、本記事が参考になれば幸いです。
・アメリカ在住Skyが美味しいドリップコーヒーを作るために、自宅で使用しているおすすめコーヒー用品を紹介【1. コーヒーミル編】
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ブルーボトルコーヒーとハンドドリップ
ブルーボトルコーヒーは、ジェームス・フリーマン氏によって2002年に創業。米国では、ニューヨーク、シカゴ、カリフォルニアを中心に76店舗を展開しています。日本にも2014年に海外初店舗となる「清澄白河ロースタリー&カフェ(現 清澄白河フラッグシップカフェ)」をオープンし、25店舗を構えています。(店舗数は2023年7月現在)
※以下、同封の小冊子「The Art of the Blue Bottle Pour Over」より一部引用
ブルーボトルコーヒーを創業する前のフリーマン氏は、一般的なコーヒーショップが販売する、事前に数ガロン単位で抽出された鮮度の低いコーヒーが好きではありませんでした。
そんなフリーマン氏が地元の大学で哲学を学んでいた頃、カリフォルニアのサンタクルズのカフェで、プアオーバー(Pour Over)、いわゆるハンドドリップコーヒーに偶然出会います。また1978年にロンドンにオープンした、プアオーバーカウンターを備えた「Monmouth Coffee」の写真を目にします。
これらのアプローチが気に入ったフリーマン氏は、「Monmouth Coffee」の写真を見よう見まねで、サンフランシスコのフェリーターミナルにコーヒーショップをオープンします。
後に同氏も認めていますが、オープン当時のプアオーバーのやり方はかなり荒削りでした。それでも1杯ずつ抽出するコーヒーの味が支持され、お店はすぐに人気店になりました。
そんな「バズり中」のコーヒーショップの様子を見ようと、ある日、日本のコーヒー専門家であるUCCのジェイ・エガミ氏がお店を訪れます。エガミ氏は、日本のハンドドリップに精通していました。
フリーマン氏のお店でエガミ氏が見たものは未熟なプアオーバーの技術でした。しかしエガミ氏は、フリーマン氏にはまだ学ぶべきことがたくさんあるものの、だからこそ大きな可能性があると感じたそうです。
それから数年後、エガミ氏がオークランドにあるフリーマン氏の焙煎所に立ち寄ったとき、日本のコーヒー器具のカタログを見せます。そのひとつであるHario V60のスワンネックケトルを見たとき、フリーマン氏は衝撃を受けます。
フリーマン氏はさっそくHarioのケトルを日本から輸入。初めは試行錯誤しながら、何回も練習しました。そしてフリーマン氏は、もっとゆっくりと、均一に、計量しながら何回かに分けて、お湯を注ぐことの利点を見つけます。
コーヒー抽出キットの中身を紹介
抽出キットに含まれるのは以下の4点です。
②フィルター「Blue Bottle Coffee filters(30枚)」
③カラフェ「Kinto glass carafe」
④小冊子「The Art of the Blue Bottle Pour Over」
それぞれの器具の特徴について紹介したいと思います。
①ドリッパー「Blue Bottle Coffee dripper」
ブルーボトルコーヒーの考えるおいしさを表現するために開発されたドリッパーで、物理学者たちと共に、3つのポイントに着目しデザインされているとのこと。
ドリッパーの下部を見ると「MADE IN JAPAN FOR BLUE BOTTLE COFFEE」の文字!驚くべきことに、この繊細なデザインのドリッパーを提供するのは佐賀県にある有田焼の窯元「久保田稔製陶所(屋号:久右エ門)」さんです。
同社のホームページによると、2015年に米国からオリジナルドリッパーの製作依頼を受け、有田を訪問したMIT卒業の物理学者とともに、7種類の試作品を製作。その中で最もコーヒーの抽出に適した形状と穴のサイズを決定し、2016年に完成したそうです。
日本のものづくり力が発揮された商品が米国のブルーボトルで使用されているのを見ると、なんだが誇らしい気持ちになりますし、この商品にますます愛着が湧きました。
②フィルター「Blue Bottle Coffee filters(30枚)」
ブルーボトルのドリッパーと調和するよう、プリーツ、全体的な形状、素材に対する改良を重ねたとのこと。
見た目は茶色ですが、生物分解可能な竹パルプを原材料に使用しており、紙の味を除去するための事前の湯通しは不要です。手間なく最初の1滴目を抽出することができ、それぞれのコーヒーが生み出す味のニュアンスを楽しむことができるよう設計されています。
個人的には、造形物としても非常に美しいデザインだと感じました。プリーツが深いことで、真上から眺めるとお花のようにも見えます。以前本ブログで紹介したMelittaやHarioのフィルターにはない魅力です。
フィルター単体のお値段は、米国のブルーボトルオンラインショップで30枚入りが6ドルと、決して安くはありません。ただし、ブルーボトルのドリッパーを使う時は、おいしさを最大化するためマストで使用すべきです。筆者は主に週末など、ゆっくりコーヒー抽出を楽しむ時に使用しています。
③カラフェ「Kinto glass carafe」
ニューヨークから東京まで、ブルーボトルのカフェで使用されているガラスのカラフェ。ブルーボトルのドリッパーにぴったりハマるデザインです。この18オンス(約532ml)のカラフェも、日本の食器・雑貨ブランド「Kinto(キントー)」とのコラボ商品です。キントーさんのガラス製品は見ているだけで美しく、筆者もいつか買ってみたいブランドです。
形状は非常にシンプルな円筒形ですが、このカラフェがおうちブルーボトル気分を盛り上げてくれます。いつもはエンバーマグカップに直接コーヒーを抽出する筆者ですが、カラフェに抽出してからマグカップに注ぐというステップを踏むことで、その1杯に対する愛着心がアップします。
ガラス部分が非常に薄くデリケートなので取り扱いには注意が必要ですが、食洗機で洗うことができるので大変助かります。
④小冊子「The Art of the Blue Bottle Pour Over」
ブルーボトルのプアオーバーの歴史、同社のバリスタにも訓練するコーヒー抽出理論とテクニック、初心者のための基本的な抽出法などが、図解付きで丁寧に記されています。
筆者にとって一番役に立ったのが「バリスタ手法」の部分。ここを見れば「〇〇秒の時点でに■■グラムまでお湯を淹れる」と湯量のペースが図解とともに示されており、ブルーボトルの抽出キットを使って美味しいコーヒーを淹れる方法が一目でわかります。
実際に抽出キットでコーヒーを淹れてみる
ブルーボトル抽出キットを使い、1カップ分(350グラム)のコーヒーを淹れてみたいと思います。以下の動画と日本サイトがわかりやすかったので参考にしています。
お湯を沸かしつつ、グラインダーでコーヒー豆を弾きます。豆の量は、350グラムの水に対し、ブレンド豆は30グラム、シングルオリジン豆は22グラムが適量とのこと。
水流のペースを把握するために、タイマーとはかりの使用はマストです。カラフェ、ドリッパー、フィルター(ブルーボトルフィルターは湯通し不要)、挽いたコーヒーをセットして、はかりの重量を「ゼロ」にリセットします。
コーヒーの粉が底の方に沈み、お湯が落ち切ったら完成です!
感想
まず1投目を注いだ際に、コーヒーの粉がお湯を吸収して、ふんわり膨らむ様子がなんと美しいこと。1投目が「Bloom Pour」と形容される理由がよくわかります。蒸らしの時間がとても楽しい瞬間に♪
2投目以降は、フィルターの幅広いプリーツのおかげでドリッパーとフィルターとの間に空間ができ、注がれたお湯がスーッと底部に向かって流れる印象を受けました。ドリップの穴からお湯が落ちる様子も、真っ直ぐ一定量で、味わいを均一にするために優れたデザインであることが感じられます。
ムラなく均一に抽出できるドリッパー+フィルターのおかげで、コーヒーの味が本当にクリアだと感じました。お湯が滞留しないので、味に雑味がほぼ出ないのが素晴らしい!数種類の豆を試しまたが、守備範囲が広く、どの豆でも豆本来の味わいを引き出してくれるように感じました。
また抽出ガイドに従えば、ハンドドリップ初心者であっても、一定程度のおいしさのコーヒーが抽出できる=つまり誰でもおいしいコーヒーを淹れられることは大きな利点だと思います。
まとめ
抽出キットの魅力をまとめると以下の4点です。ハンドドリップ好きは買って損はない商品だと思います。
- ブルーボトルのバリスタが抽出するコーヒーを、難しいテクニックなしで自宅で再現できる。
- 特に入念に設計されたドリッパー+フィルターは水流を見事にコントロールし、初心者でも雑味のないすっきりとしたコーヒーを淹れることができる。
- 日本の有田焼の技術や、Kintoブランドのものづくり力が生かされており、間接的に日本のものづくりを応援できる。
- 純粋にデザインが美しい。
米国では、ドリッパー、フィルター、カラフェ、小冊子を単体で買うこともできますが、セットで買うと少しお得になります。小冊子が不要な場合は、それぞれ単体で買った方がキットを買うより若干安くなります。