[閉幕済] 草間彌生展示会「KUSAMA: Cosmic Nature」を見にニューヨーク植物園を訪問 (行き方ガイド付)

NEW YORK

ニューヨークに住んでいると、なかなか雄大な自然に触れる機会がなく、時々木々が生い茂る緑道を歩いたり、川のせせらぎを聞きたくなったりしませんか?

もちろんニューヨークにはセントラルパークもあれば、ハドソン川やイースト川など、自然を感じられる場所はあります。でも、ガーデニングやトレッキングが好きな筆者にとって、それらでは少し物足りません。無性に植物や自然の癒しが欲しくなる時があります。

ということで、2021年7月のとある週末、少し足を伸ばしてマンハッタンの喧騒から離れたブロンクス(Bronx)にあるニューヨーク植物園(New York Botanical Garden: NYBG)へ行ってきました。ちょうど海外でも名高く、私が好きな草間彌生氏の展示会が2021年10月末まで開催中ということで、これは見逃すわけにはいきません。

今回、筆者が実際にニューヨーク植物園へ行った方法、植物園の見どころ、草間彌生さんの展示会の様子をお届けします。

ニューヨーク植物園への行き方と事前のチケット購入方法

事前のチケット購入方法

ニューヨーク植物園のチケットは同園ウェブサイト内「Admission」より事前に購入することができます。
本記事を執筆している2021年8月現在、入園者数の制限は行っていないと記載されていますが、日付と入場時間を選んでチケットを購入するオンラインフローになっています。

現在は草間彌生展示会の最中ということで、以下のチケットの中から選択します。(情報は2021年8月時点)

KUSAMA Garden & Gallery Pass
屋内・屋外問わず、全ての草間彌生展示物(❶-⑨)、Haupt温室、Everett Children’s Adventure Garden、トラムツアー、植物園一般エリアにアクセス可
 

KUSAMA Garden Pass

屋外の草間彌生展示物(⑥-⑨)、Everett Children’s Adventure Garden、植物園一般エリアにアクセス可

 

一般 一般(13-64歳) $35 $25
シニア(65歳以上) $32 $22
学生(ID提示要) $32 $22
小児(2-12歳) $15 $12
乳児(2歳未満) $0 $0
ニューヨーク市民 一般(13-64歳) $35 $15 (今回購入)
シニア(65歳以上) $32 $7
学生(ID提示要) $32 $7
小児(2-12歳) $15 $4
乳児(2歳未満) $0 $0

展示物は屋外と屋内にあり、下記❶-⑨の展示を鑑賞できるKUSAMA Garden & Gallery Passか、⑥-⑨の屋外の展示のみを鑑賞できるKUSAMA Garden Passの2種類から選べます。参考までに展示物のリストも掲載します。(黒丸数字が屋内、白丸数字が屋外)

草間彌生展示物リスト(MAP)
❶ Pumpkins Screaming About Love Beyond Infinity
❷ Flower Obsession
❸ Mertz Library Building Gallery – Paintings, collages, early sketches, other works
❹ Walking Piece
❺ Haupt Conservatory Galleries
⑥ I Want to Fly to the Universe
⑦ Narcissus Garden
⑧ Ascension of Polka Dots on the Trees
⑨ Dancing Pumpkin
➓ Infinity Mirrored Room  2021年8月3日〜公開 (別途チケット必要)

今回筆者は屋外の展示物を中心に植物園を全体を広く散策したいと考え、KUSAMA Garden Pass(ニューヨーク市民用)を事前にホームページより購入。Eメールで二次元バーコードが送付されてくるので、植物園入り口で提示しスキャンされるしくみです。

当日、植物園入り口でもチケットが買えるとのことですが、当日の鑑賞を確実なものとするために、同園ウェブサイトでは事前購入を強く勧めています。

ニューヨーク植物園への行き方

ニューヨーク植物園(New York Botanical Garden)
住所 2900 Southern Boulevard, Bronx, NY 10458-5126

最寄り駅 (1) Metro-North鉄道 Harlem Local線: Botanical Garden駅(Mosholu入口直結)

(2) 地下鉄: B、D、4系統:  Bedford Park Blvd駅
そこからバスBx26に乗り「Garden’s Mosholu Entrance」下車、または
徒歩の場合、Mosholu入口まで所要約20分

(3) 地下鉄: 2系統: Allerton Ave駅
徒歩の場合、昼間時のみ開門されるEastゲートまで所要約13分

駐車場 火曜〜日曜 $20/台
有効なParking Passを所持しているNYBGメンバー、またはサポーティングレベルのNYBGメンバーは無料
営業時間 月曜は閉園 詳細はホームページで随時確認
ホームページ https://www.nybg.org/

今回は一番早く簡単な手段である(1) Metro-North鉄道 Harlem Local線を使用する方法でニューヨーク植物園へ向かうことに。MTAと比べると割高になり、休日は便数がそれほど多くありませんが、正面玄関であるMosholu入口の目の前に駅が位置しているので便利です。

Metro-North鉄道はマンハッタンのGrand Central駅から出ていますので、まずはGrand Central駅を目指しましょう。
切符は地上階の券売機(または窓口-ほとんど閉まっている)か、MTA eTixアプリで購入することができます。

Metro-Northではニューヨーク市内が出発地&到着地であれば、土日限定の「City Ticket」という割引運賃が利用できます。購入した日に使用することが条件ですが、Grand Central駅からBotanical Garden駅までは$4.50の片道切符を購入できます。同区間の一番高いピーク運賃は$9.75、オフピーク運賃は$7.25なので、だいぶお得ですね。(2021年8月現在)
私はこのブログを書いている時にこれを知りました。次回はちゃっかり利用しよう。

CIty Ticketには、例えば列車内での購入ができなかったり、払戻しに$10かかったり、特定の駅から出発には利用できない等の制限がありますが、Grand Central駅とBotanical Garden駅の同日単純往復であれば、問題なく使用できます。

無事に電車の切符を購入したら、プラットフォームを確認します。地上階の電光掲示板には路線ごとに出発列車の情報が表示されており、出発時刻が近づくと「Track」の欄に番号が表示されます。Grand Central駅には地上階と地下にプラットフォームがあります。今回私たちの電車はTarck 106から出発ということで、地下に降ります。100番台のプラットフォームは地下にあります。(Grand Central駅地図

<今回はTrack106から出発、常に行き先が停車駅として表示されているか確認>

たいてい出発時刻の10分くらい前には列車が停車しているので、列車に乗り込みます。

列車が出発すると検札があるので、切符をいつでも提示できるように準備しておきましょう。マンハッタンから約20分でBotanical Garden駅に到着です。

ニューヨーク植物園の見どころ

全米一巨大な植物園として250エーカーの敷地に50の庭園を持つニューヨーク植物園。今回半日の訪問では全ての庭園を回ることはできませんでしたが、今回の訪問のハイライトと屋外で鑑賞できた草間彌生アートを紹介します。

「Dancing Pumpkin」

まず初めに向かったのは、Haupt温室(Haupt Conservatory)の前に展示されている草間彌生作品「Dancing Pumpkin
。草間作品の中でもこの水玉の黄色いかぼちゃは代表作品ですね。実は筆者が日本にいた頃、草間さんの作品が見たく、香川県の直島にある「南瓜」を見に行ったことがあります。

このDancing Pumpkinはとても躍動感に溢れており、背後に見えるHaupt温室との調和も素晴らしいと感じました。パンデミックで1年開催が延期になった展示会ですが、こうして力強いインパクトを人々に与える作品を、このタイミングで披露する草間氏のパワーにただ感動。幼少期に自然に囲まれて過ごした草間氏が植物からヒントを得た作品群は、植物園というロケーションと相まって互いに良い効果をもたらしています。

パンプキンの下に入って写真を撮りたい場合は、列を作って順番を待ち、1組ずつパンプキンの下に誘導されます。

今回のチケットでは入場は叶いませんでしたが、Haupt温室内にも沢山の草間作品が展示されています。

「I Want to Fly to the Universe」

次にレストランやショップ、ビジターセンターが集まる中央エリアに展示されている「I want to Fly to the Universe」を鑑賞します。この人工の池の中に浮かぶ水玉のヒトデのような物体。顔はとてもひょうひょうとしていて憎めない感じですね。

作品説明には草間氏談として「わたしは生命のエネルギーを宇宙の水玉に変換する。そしてそのエネルギーは愛と共に空へ飛び立つ」というような内容が英語で書かれています。

この作品からはエネルギーと躍動感を感じますし、池が空のブルーを反射し、水面とも空とも言える世界に飛び出そうとしているようです。背面は青がベースの赤い水玉になっています。見る人を明るい優しい気持ちにしてくれる作品です。

「Narcissus Garden(ナルシスの庭)」

屋外展示で筆者が一番気に入った作品です。Native Plant Gardenの近くを流れる人工池に浮かぶ無数のシルバーの球体。これらの1400個ほどのミラーボールは水流や風の影響を受け、常に動きながら形を変えていきます。

ナルシスの庭」は草間氏を象徴するアートワークのひとつで、氏の初めての屋外展示として1966年に第33回ヴェネツィア・ビエンナーレで披露され、以来世界各地のトリエンナーレやアートフェスティバルで披露されてきました。

まさに自然と一体となったインスタレーションです。ミラーボールには空の色や植物の緑、水面が写り込み、キラキラ輝いて独特の世界を作り上げているとともに、ミラーボール同士が擦れ合う時に発生する小さな音も作品の一部となっています。背後にあるNative Plant Gardenの薄紫の花々とともに、時の流れ、風や水の流れをゆったり感じることのできる作品です。

人工的なミラーボールと自然という一見異質なものの組み合わせが、より自然の美しさと雄大さを感じさせてくれるという、素晴らしいアートワークでした。

Rockefeller Rose Garden(ロックフェラーバラ園)

ナルシスの庭を鑑賞した後、湿地帯を抜け、Bronx川の対岸に渡ります。対岸には草間展示はありませんが、有名な桜コレクションや、ライラック庭園、野菜庭園があります。中でもこのロックフェラーバラ園は広大で、650種という非常に多彩なバラの花を楽しむことができます。

4月から10月がシーズンということで、咲き誇るばらとその香りを楽しむことができました。

庭園は高名な景観設計家、Beatrix Farrand氏により1916年に設計されます。しかし第一次世界大戦による鉄不足で一部が未完のままとなっていました。1980年半ばに、かの有名なロックフェラー一族のDavid Rockfeller氏の援助が受けられることとなり、ついに1988年、オリジナルのデザイン画に基づいたバラ園が完成します。David Rockfeller氏の妻であり、園芸家であった「Peggy」の名前をとってPeggy Rockfeller Rose Gardenとも呼ばれています。

Waterfall(滝)

バラ園から、Cherry Collection(桜の木の並ぶ小道)を抜けると、Waterfall(滝)に続く緑道への分岐点が現れます。ここは緑林の一部で、頭上には沢山の木の葉が生い茂り、木々の間から差し込む太陽の光が本当に美しい場所です。

これだけでもとてもリラックスできる空間なのですが、この小道を右に進むとBronx川沿いにある遊歩道に出ます。そして目の前に、人工のダムから流れ落ちる小滝が現れます。

滝というには落差は大きくないですが、それでも流れ落ちる水からミストのような水蒸気が漂っているのを感じることができ、ニューヨーク市ではなく、どこか山奥にいるかのような錯覚に。

私にとってはここが植物園内で一番のお気に入りの場所になりました。マンハッタンでは決して感じることのできない、自然のパワーというか、心が洗わる感覚に包まれます。

Bronx川はニューヨーク市内を流れる唯一の自然河川だそうで、植物園が設立される前にこのあたりの土地を保有していたLorillard家がBronx川にダムを作り、水流を利用した石臼でタバコを製造していたとのこと。近くにはStone Millと呼ばれる石臼の古屋だった建物をリノベーションした歴史的な建築物があり、結婚式などにも利用できるようです。

Bronx川の両岸に広がる広大な森林の中を歩くだけで、トレッキングに来た気分になれるのでおすすめです。

「Flower Obsession」と「Ascension of Polka Dots on the Trees」

再度Bronx川のMosholu入口側に戻り、草間作品を見ます。
Flower Obsession」は屋内展示の扱いになるので、中を見るにはKUSAMA Garden & Gallery Passが必要ですが、こちらは外観を捉えた写真です。来園者がお花のシールを貼っていく参加型の作品ということで、壁一面がお花で覆われていました。

下の写真は「Ascension of Polka Dots on the Trees

Mertz Library Building Gallery – 今回のチケットでは中を見ることはできませんでしたが、草間氏の絵画、コラージュ、初期のスケッチなどの作品が展示されています。

◆まとめ◆

  • 今回ニューヨーク植物園初訪問でしたが、広大な敷地に広がる植物や緑道に癒されるとともに、カルチャーの面でも草間彌生展示会を満喫することができました。
  • 草間作品にフォーカスするなら、Garden & Gallery Passを購入して、屋外庭園にあまり足を伸ばさずに、草間作品だけを見るという計画をしてもいいかも知れません。(余力があれば庭園も見る。)なにせ広大で足が疲れるのと、Library内に入るために結構長い列ができていたので、作品全てを制覇するには時間もかかりそうです。
  • Grand Centralから電車で20分で、マンハッタンより思ったより近かったです。Metro-Northは高いですが、時間と体力の点から使用する価値はあるかと思いました。
  • 至るところに水飲み場があったので、暑い晴天の日には大変助かりました。でも適度に休憩するなど、夏は熱中症対策を万全に。
  • 広大すぎて全ての庭園を見れなかったので、次回は季節違いの秋や春に来てみたいと思いました。Rock Gardenをはじめとする今回見きれなかった庭園やHaupt温室にも次回は入ってみたいです。頻繁に訪れる方はメンバーシップを考えてもいいかも知れません。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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