ホリデーシーズンが終わり、春が来るまでのニューヨークは寒くて、どんよりした日が多く、気分が落ち込みがち。そんな中、2023年1月からルイ・ヴィトンと日本を代表する前衛アーティスト草間彌生氏とのコラボレーション企画が始まり、街中のルイ・ヴィトンの店舗が、色鮮やかなポルカドット(水玉)に包まれています。
(街中の広告)
さらにルイ・ヴィトンのコラボ企画と重なるように、先日開業した「グランドセントラル・マディソン」ターミナルのコンコースには、草間氏の巨大なモザイク画が設置されており、今ニューヨークでは、街中の至る所で草間アートを感じることができます。
実は筆者は、草間アートが好きで、日本にいた頃は草間氏の「赤かぼちゃ・黄かぼちゃ」のオブジェがある香川県の「直島」を訪れたことがあります。また昨年はニューヨーク植物園とのコラボレーション展示「KUSAMA: Cosmic Nature」を見に行きました。(過去記事はこちら)
そんな筆者が、23年初春のニューヨークのどこで、どんな草間アート(装飾)が見られるのか?実物を見た感想とともに紹介したいと思います。
草間アートが好きな人から、ルイ・ヴィトンのコラボ限定商品が気になっている方まで、本記事が参考になれば幸いです。
草間ロボットが5番街のルイ・ヴィトン旗艦店に登場!
世界で話題沸騰の等身大「草間ロボット」が見られるのは、高級店が立ち並ぶ5番街のルイ・ヴィトン旗艦店。
店舗の外壁全体が草間氏を代表するモチーフの一つであるドット(水玉)で包まれています。この外壁のデコレーションを見ただけで、春を感じて明るい気持ちになりました。
そして草間氏本人も。あまりに巨大なので、わりと離れたところにいても目に飛び込んできます。
(離れたところからでもよく見える)
はやる気持ちを抑えながら、店舗入り口右側にあるショーウィンドウへ。
お目当ての草間ロボットがいました!ニュースや動画で見たことはありましたが、やはり直接見るとそのリアルさを身近に感じることができます。
今回絵筆を持った腕の部分は動いていませんでしたが、首から上はまるで人間のように動いていました。筆者の推測ですが、目の部分に人の動きを感知するセンサーが付いているのでしょう。ショーウィンドウの前を通る人を追うように、首や表情筋、まぶたまで、まるで本物の人間のように動き、「じろー」っと見つめます。
(アップの写真)
眼球も精巧に作られていて、目の奥に眼光のようなものが見えます!目が合い軽く微笑まれると「ドキッ」とします。技術の進化にただただ驚きます。
皮膚もとってもリアルな質感が再現されています。通りがかった通行客の何人かは「本物の人?じゃないよね?」と確認し合ったり、「リアルすぎて少し怖い」なんてつぶやく人も。
草間氏本人が公の場に姿を見せることは、最近ほぼないようですが、こうして本人そっくりのロボットが世界の主要都市で存在感を示していることが、とっても面白いと感じました。
通行人が興味深そうに眺めているロボットが、日本生まれのアーティストであることを、誇らしく思いました。
ロボットの前を動いてみたり、他の通行客の反応をみたりして、楽しい時間を過ごしました。期間中ニューヨークにいる方は、一見の価値はあると思います。
場所
【ルイ・ヴィトン × KUSAMA】ポップアップストア (ミートパッキングディストリクト)
お次の目的地は、ルイ・ヴィトン × 草間彌生コラボ企画のために開設された期間限定のポップアップストアです。
チェルシーマーケットにほど近い、ミートパッキングディストリクト(通称:MPD)にあります。グーグルマップやルイ・ヴィトンのホームページで表示されている場所(2023年2月5日時点)と実際のポップアップストアが少し異なる位置にあるので注意が必要ですが、Gansevoort St.とWahington St.の交差点に辿り着けば、鮮やかな黄色の水玉模様が施されたお店が見えるので、心配無用です。
実際の場所
期間
SECRET NYCのサイトによると23年4月まで(具体的な日付は明示なし)
お店の中に入ると、そこはまるで美術展示のよう。草間氏の代表作の「南瓜」を連想させる、黄色に黒の水玉模様が、壁、天井、床を覆い尽くしています。
そして至るところに散りばめられたミラーボールにそれらの水玉模様が映り込んで、水玉の中に水玉の世界が広がります。これは昨年NYBGの展示で見た「ナルシスの滝」を思い起こさせます。
店内に陳列されている限定商品もまるで美術展示の一部のようです。
ホームページによるとコレクションは、草間氏のPainted Dots(ペインティッド ドット)、Metal Dots(メタル ドット)、Infinity Dots(インフィニティ ドット)、そしてPsychedelic Flower(サイケデリック フラワー)で彩られています。
Painted Dots(ペインティッド ドット)はバックや小物、洋服の生地の上に、水玉模様を絵筆で描いたような加工がされています。多色の水玉のバージョンや、モノトーンの水玉バージョンなどがあります。
Infinity Dots(インフィニティ ドット)は、同じ水玉なのですが、ペインティッドドットに比べると水玉模様が生地と一体化した仕上がりになっています。最近ブランド物への欲もすっかり無くなりましたが、実際店舗を訪れてみると、「LV × YK オンザゴー PM($4200)」の赤地に白の水玉バッグ(下の写真参照)が素敵だと思いました。
Metal Dots(メタル ドット)は下の写真のマネキンが着ているシルバーのジャケットがその一部。
商品を実際に触ったり、在庫があればその場で購入したりすることができます。在庫がない場合は注文の対応に応じてくれるとのこと。
草間氏とのコラボ限定商品は、通常ラインよりも高めの値段設定のようですが、どうしても欲しいという方は、小物なら手が出るかもしれません。
筆者は何も購入しませんでしたが、草間ワールドを存分に楽しませていただきました。
ソーホーにもポップアップがあるようです。
SOHOのポップアップの場所
新駅グランドセントラル・マディソンに草間氏の巨大モザイク画が登場!
次に紹介するのは、ルイ・ヴィトンとのコラボ企画とは関係なく、2023年1月に開業したLIRRの新駅に設置された草間氏アートワークです。
LIRRとはロングアイランド・レイルロードのことで、MTA(ニューヨーク都市圏交通公社)の路線のひとつ。ニューヨーク市からイーストリバーを挟んで東方向へ伸びるロングアイランドを走行しています。
これまでマンハッタンからLIRRを利用する場合、西側にあるペン・ステーションから乗降しなくてはなりませんでしたが、今回グランド・セントラル駅に隣接する形で新しく建設された「グランドセントラル・マディソン」ターミナルからLIRRが利用できるようになります。
マンハッタン東側の大型駅であるグランドセントラルから初めてLIRRにアクセスできるようになり、利便性が高まると言われています。
(23年2月初旬時点ではジャマイカ行きのみ運行)
さて本題に戻り、ターミナル内で草間氏の作品が展示されている場所は、以下の地図で赤枠で印をつけた部分です。この地図は地下のコンコースを示しています。
(地図出所:https://new.mta.info/map/24956)
グランド・セントラル駅構内(地図上では下部)から向かう場合は「LIRR」の表示を目印に進むと、エスカレーターでグランドセントラル・マディソンのマディソンコンコースにアクセスできます。
地上から向かうなら、展望台「SUMITT(サミット)」で有名な、One Vanderbittのビルから入り、地下へ進むととわかりやすいかも知れません。
(One Venderbittの42st側入り口)
コンコースに入ったら「Ticketing(切符売り場)」を目印に進むと良いでしょう。地上で言うEast 46thとEast 47thの通りの間の部分、切符売り場の向かって反対側に草間氏のモザイク画があります。
(Ticketingカウンター[切符売り場]。まだピカピカです。作品はカウンターの反対側にあり)
(作品:左側3分の1)
「A Message of Love, Directly from My Heart unto the Universe (2022)」と名付けられたアートワークは同氏の「My Eternal Soul」シリーズを発展させたガラスのモザイクでできた作品です。
作品の大きさは横幅120フィート×高さ7フィート(約36.5メートルx 2.1メートル)と横幅が非常に長く、コンコースを歩く人の目を楽しませてくれます。ミオット・モザイク・アート・スタジオ(Miotto Mosaics Art Studios)が制作。
(作品:右側3分の1)
モザイク画の中には鮮やかな色彩で、たくさんの抽象化されたモチーフが描かれており、何をイメージするかは、見る人によって解釈や捉え方が異なるでしょう。筆者は、自然界の一部として生きる人間、そんな人間の悲哀をこの作品から感じました。
MTAのホームページに記載されているこの作品についての草間氏のメッセージ
May you all experience the true beauty of loving humanity.
Human life is beautiful.
My wish is to deliver this vision, with all that is in my life, to the people of New York.<筆者訳>
私の心から直接、宇宙へ向けて愛のメッセージを捧げます。
皆さんが、人間を愛することの真の美しさを経験することができますように。
人間の命は美しい。
私の願いは、このビジョンを、私の人生のすべてをかけて、ニューヨークの人々にお届けすることです。
少し下がって全体を見渡してみたり、近くに寄って個々のモチーフを詳しくみたり、楽しみ方もいろいろで、鑑賞を終えてとても豊かな気持ちになりました。
駅のコンコースという慌ただしく人々が行き交う場所に彩りを添え、日常から少しスイッチをオフにすることができる、素敵な作品だと思います。LIRRを利用せずとも、一度鑑賞してみる価値は十分ありだと思います。
まとめ
街全体に水玉を散りばめた今回のルイ・ヴィトン × 草間彌生のコラボ企画は、まさに圧巻でした。ちょうどホリデーシーズンが終わり、寒くて気持ちが暗くなりがちな時期の開催もタイミングが良かったです。色鮮やかな装飾が一足早く春を感じさせてくれました。そして改めてハイブランドにも見事に融和してしまう、草間アートの魅力を感じました。
期を同じくして、グランドセントラル・マディソン駅という新しい交通の要所でも草間アートに接することができるようになりました。日本を代表するアーティストがこのように目立つ場所で取り上げられると嬉しい気持ちになります。
グランドセントラル・マディソンの作品は常設展時なので、急ぐ必要はありませんが、どこも気軽に見に行けるので、近くを訪れる機会のある方はぜひ立ち寄られてみてはいかがでしょうか。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!