ブルックリンに開店したアメリカ初のだし専門店「Dashi Okume(だし尾粂)」を訪問!

FOOD

だし(出汁)」は、うまみに象徴される日本の食文化に不可欠な要素で、海外在住者にとっては、故郷を思い出し、ほっと落ちつかせてくれる存在です。

アメリカでは世界のたくさんの国や地域の料理が食べられます。でも日本のだしのような深いうま味を感じるスープには、あまり出会ったことがありません。だしとうまみの文化は、他国の料理にはない素晴らしい特徴だと感じています。

そんな「だし」の専門店が、ブルックリンにオープンしたと聞きつけ、さっそく行ってきました。お店の名前「Dashi Okume」を聞いて聞き覚えが!実は筆者が今年日本に一時帰国した際に訪問した三重県多気町の商業施設VISON(ヴィソン)で、だしパックを購入したあの「尾粂(おくめ)」ではないですか!

一気に親近感が湧いたと同時に、寿司やラーメンなどと比べるとまだまだ海外での認知度は高くない「だし」の専門店をアメリカで初めてオープンするというチャレンジ精神を応援したくなりました。

本記事では、尾粂の紹介、Dashi Okumeを実際に訪れた様子、使用済みのだしパックを活用したふりかけについて紹介します。

気になった方は現地を訪問するもよし、オンラインで商品を購入するもよし、ぜひだしの魅力を一緒に再発見しましょう。

尾粂(おくめ)の紹介

創業はなんと明治4年(1871年)!加納粂吉氏が日本橋魚市場に尾粂商店を出店。その後大正12年の関東大震災で日本橋魚市場が壊滅状態となり、同年芝浦に移転するも、交通の便が悪く現在の築地魚市場に移転したそうです。

現在、尾粂商店は豊洲市場で昔ながらの無添加や天日干しの製法にこだわった水産加工品の卸売を取り扱っています。築地にはだし尾粂の築地製造所を構えます。

前述の三重県多気郡にある「三重VISON(ヴィソン)」に出店したのは2021年。そこで世界初となる「オーダーメイドだしパック(特許出願済み)」のコンセプトショップが誕生しました。

(尾粂 三重VISON店 引用:https://vison.jp/area/wavison/)

尾粂の「だしソムリエ」さんが、創業から150年の歴史で培ってきた仕入れルートから、無添加の24種類の出汁素材を厳選。その中から希望の素材を選び、店内で配合→粉砕→充填→包装をして「だしパック」にしてもらえます

素材の種類と、配合比率を合わせると、組み合わせは1兆通りを超えるとのこと。文字通り「世界でひとつだけ」のオーダーメードだしパックを作ることができます。

そんな「オーダーメイドだしパック」を作れる尾粂さんのだし専門店「DASHI OKUME」が2022年9月にブルックリンにオープン。もちろんアメリカ初のだし専門店!

Norman通りにある50 Normanという施設内に出店しています。イートインスペースも併設され、尾粂さんのだしで作る味噌汁や小鉢料理のついた定食を提供。オーダーメイドだしだけでなく、干物などの尾粂の商品や、味噌や昆布茶など和の食材も販売しています。

DASHI OKUMEを訪問

DASHI OKUMEのあるブルックリンのグリーンポイント地区は落ち着いた住宅街と昔の倉庫街を活用したアーティスティックな店舗が混在するヒップでおしゃれなエリア。イーストリバーも近く筆者も大好きなエリアです。

DASHI OKUMEが出店している50 NormanのあるNorman通りは、元は倉庫だったと思われる建物が並び、雑貨、家具、レストラン(日本料理レストランや日本酒さやんも!)などのお店が入居しています。

尾粂さんのプレスリリースによると、50 Normanの空間デザインは長坂 常氏(スキーマ建築計画)が担当されたとのこと。インダストリアルな外観に、内部は梁(ハリ)や電線がむき出しにしになっています。おかげで天井が非常高く、開放感がある店内に。インテリアには多くの木材が使われていて、無機質な内装に温かみを加えています。

(50 Normanに同居するデザインストア&ギャラリー「CIBONE」)

店内に入るとまず「だし」の香りに包まれます。日本人なら誰もが懐かしいこの香り。子供の頃、朝起きたら母がお味噌汁を作っている、そんな風景を思い出させてくれます。

入口すぐ左側には、すでにパック詰めされた「だしパック」の試飲ができるコーナーがあります。筆者が訪れた日は5種類ほどサンプルがありました。基本だしや、野菜だし、京都だしなどを試すことができました。

店頭販売価格もチェック。基本だしは30パック入りが$33、15パック入りが$19。自宅用には少し贅沢なお値段ですが、無添加厳選素材であることやアメリカでの希少性を考えると、妥当な値段かなと思います。

さらに奥にオーダーメイドだしパックを注文するカウンターがあります。日本人ではないお客さんが途切れることなく注文する姿が。「だし」文化が少しずつ海外の人にも浸透してきていることを目の当たりに。

今回筆者はオーダーメイドだしパックは注文しませんでしたが、どうやら30パック入りを2袋以上注文する必要があるようです。「ベースだし(A)」5:「サブだし(B)」3:「アクセントだし(C)」1:「隠し味だし(D)」1のおすすめ比率に沿って好きな素材を選ぶと良いとのこと。

ケースのふたの部分に素材を選ぶ時に役立つA〜Dの表示があり、素材ごとにグラム単位で価格が設定されています。とてもわかりやすい注文システムですが、店員さんと相談しながら、自分オリジナルのだしを作る過程はとっても楽しそうです。

素材のセレクトが終わったらカウンター後方で加工し、その場でだしパックを作ってもらえます。アメリカだからと言って妥協せず、三重県のVISONにある尾粂さんと同じ本格的な素材のラインナップに感動。またセロリ、トマトなどアメリカ独自と思われる野菜ベースの素材も揃えています。

だしの他にも、尾粂さんのだし醤油キット、干物・乾物、その他和の調味料などが販売されています。中でも特に筆者が気になったのが、日本各地で作られた味噌のセレクション。7〜8種類もあります。筆者の大好きな八丁味噌も!

お味噌についてもプレミアム価格帯ですが、日本のご当地味噌なんてアメリカではなかなか手に入らないので貴重です。それにせっかく高品質のだしをとったなら、最高の味噌でお味噌汁を作りたいですよね。

イートインスペースで「焼き鮭定食」を食す

今回の訪問での最大の楽しみがイートインスペースで焼き鮭定食を食べること。尾粂さんのだしで作る味噌汁もさることながら、本格的な純和風定食、アメリカに来てから一度も食べていません。というか、面倒くさがりの筆者は、1汁3菜の和食なんて滅多に自炊することはありません。

定食の内容は、焼き鮭に小鉢2つ、漬物、白ごはん、佐野みそさんの味噌を使ったお味噌汁、丁寧に淹れたお茶(せん茶、ほうじ茶、そば茶から選択)。

お値段は$35(チップ、税含まず)! 昨今のインフレ、物価の高いニューヨーク、それらを加味してもお高めの値段設定ですね。ちょっと良いランチコースが食べられる値段です。でも最近頑張っているし!と自分に言い聞かせて注文。日本にワープしたかのような、プチ贅沢和食ランチのスタートです。

まずは素敵なプレゼンテーションに心躍ります。純和風の食器がそれぞれの料理を引き立てています。こんな丁寧な定食、いつぶりだろう。

さっそくお味噌汁から。具は青さのりだけのシンプルお味噌汁ですが、だからこそ「だし」の味に集中していただくことができます。何層にもうまみが重なり、深い深いだしです。これだけで、はぁ〜と落ち着き、幸せな気分に。

メインの焼き鮭は脂肪分の多いふっくらタイプです。皮の部分がとってもいい感じにこんがり焦げていて、大根おろしが添えられているのがありがたい。ご飯との相性はもはや説明不要。どんどんご飯が進みます。ちょうど良い塩加減。ただ鮭が大きめだったので、もう少しご飯の量があればありがたかったです。ご飯おかわり$5はさすがに注文できなかった(涙)

テーブルに置いてあった「だし醤油」を少し鮭にかけてみましたが、とろっとしており美味しかったです。椎茸とホタテのアクセントが効いた醤油に仕上がっていました。最高!この商品もいつか買ってみたいです。

小鉢は煮物2品。どちらもしっかり煮込まれて味が染みていて美味しかった〜。

お茶は急須で淹れているとのこと。アイスティーで頼みましたが、ホットでも作ってもらえます。急須で淹れたお茶、久しぶりに飲みました。美味しい!

あっという間に完食!お味噌汁、鮭、小鉢、お茶に至るまで、全てが丁寧で、美味しくいただきました。大満足。和食の偉大さを改めて実感しました。

<自宅で>だしをとった後のだしパックをふりかけに

上の写真は5月に三重VISONの尾粂さんで購入した「三重だし」のだしパック。自宅でだしをとり、お味噌汁など作ってありがたくいただきました。天然素材を使用しているということもあり、味噌を少し多めに入れて塩分を追加してあげるのが良いでしょう。

貴重なだしパック。だしをとった後に捨ててしまうのはかなりもったいない。特にアメリカにいるとなおさら。

そんな中、「だしをとった後のだしパックでふりかけを作れる」との案内がパッケージに。せっかくなんで、自家製ふりかけを作ってみました。

だしパックの袋を破って中身をフライパンに。しばらく弱火で炒めて水分を飛ばします。そして醤油・砂糖・みりん・酒を目分量で入れてさらに炒めます。ある程度水分が飛んだら出来上がり。

ご飯にかけていただくと、ほんのり素材の味がする、食感もプチプチ楽しめるふりかけができました。だしをとった後とはいえ、まだうまみも感じられ、ご飯が進みます。

食材を無駄にせず、最後までありがたくいただく、これも和食の素晴らしい文化ですね。

まとめ

今回のDASHI OKUMEさんへの訪問や、実際に商品を試してみて、天然の素材からとる「だし」は格段に美味しく、奥深さが全然違うなぁと再認識しました。慌ただしくすぎる毎日ですが、たまにはしっかりだしをとるところからお料理を作ってみてはいかがでしょうか。

ちなみにオーダーメイドのだしパックはDashi Okumeさんのホームページからオンラインでもオーダーすることができます

Dashi Okumeさんのブルックリンの店舗はインテリアなどが洗練されており、新しいカルチャーに敏感な人たちを惹きつける要素は十分。いつか寿司やラーメンと肩を並べ、だしがクールな日本の食文化の代表になる日が来ますように。

以前本ブログで紹介した久世福商店さんと同じく、日本食の素晴らしさを世界に広めようとする挑戦を日本人として影ながら応援したいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

Dashi Okume (だし尾粂)
住所 50 Norman Ave, Brooklyn, NY 11222
エリア グリーンポイント
最寄り駅 地下鉄: G「Nassau Ave」下車 徒歩約3分
電話番号 (646)434-2912
ホームページ アメリカ:https://okume.us/
日本:https://okume.jp/

 

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