食通憧れの地 ルイジアナ州ニューオーリーンズ(New Orleans, LA)観光ガイド 【後編・グルメ〜お土産編】

FOOD

ヨーロッパ、アフリカ、カリブ諸島など、世界の様々な地域の人々の流入により、多様な文化が混じり合ったニューオーリンズ。異国風情のある街並、独特のフードカルチャー、ジャズなどの音楽シーンは多くの人を惹つける魅力になっています。

本シリーズでは筆者の2泊3日の旅行記を兼ね、NewOrleans.comなどのウェブサイトの情報を参照しながら、読者の方がニュオーリンズ観光の基本を抑えらえるような記事を目指しています。

前編ではニューオーリンズの地理、簡単な歴史、何をして楽しむか?を紹介しました。後編にあたる本記事では、食に焦点を当て、ニューオーリンズのグルメを中心に紹介します。お土産のアイデアも最後に記載しています。

何を食べる? What to eat?

前編内「ニューオーリンズの歴史」を読んでいただければお分かりの通り、ヨーロッパ、アフリカ、カリブの文化は食事にも影響し、ニューオーリンズ独自のフードカルチャーを生みました。現在では全米に普及している料理も実はニューオーリンズ発祥だった!なんて発見もありました。

あまりにご当地グルメが多くて2泊3日の滞在では食べきれませんでしたが、食いだおれ旅行をするには最高の場所です!筆者もすでに次回の訪問時に食べたいものをリストアップしています笑

ケイジャン(Cajun)料理

歴史的な定義から。カナダ東部の旧フランス領アカディア(現在のノバスコティア周辺)が18世紀にイギリス領になった際、アカディアからミシシッピ川河口部に移住したフランス系住民のグループ(アカディア人)をケイジャン(Cajun)と呼びます。

やがて彼らのフレンチスタイルと南部料理が融合し、地元で取れた食材を使った、ルイジアナのミシシッピ川周辺の郷土料理がケイジャン料理と言われるようになりました。

沢山の燻製肉を使った料理や、ジャンバラヤ(Jambalaya)などの大鍋料理ブーダン(Boudin)と呼ばれるお米が詰まったスパイシーなポークソーセージがケイジャン料理の代表的なものであり、茹でたザリガニ(Crawfish)も副次的に生まれたケイジャン料理です。

(出所: http://frankieandjohnnys.net/gallery/)

クレオール(Creole)料理

対してクレオール料理は更なる多文化融合の料理です。ニューオーリンズで生まれましたが、ヨーロッパ、アフリカ、ネイティブアメリカンにルーツを持ちます。フランスの影響が一番強いものの、イタリア、スペイン、ドイツ、さらにはカリブ地域の影響も見て取れます

クレオール料理の特徴は濃厚なソース、地元のハーブ、熟したトマト、そして地元で獲れたシーフードをふんだんに使用していること。ニューオーリンズの人々の台所で代々受け継がれている地元料理でもあります。濃厚なルーのガンボスープ(Gumbo)や、シュリンプクレオールグリッツ&グリアード(牛カツレツのグレービーソース煮込みをコーンミールにかけたもの)などがあります。

ケイジャン料理とクレオール料理の違いと類似点

分かりやすい違いは、クレオール料理は一般的にトマトやトマトベースのソースを使いますが、伝統的なケイジャンでは使われていません。

類似点はどちらもニューオーリンズで生まれ、深みのある味わいで、地元のハーブを混ぜ合わせ、ルーを使用します。また両方ともスパイシーだと思われがちですが、スパイシーでない料理もあります。これらは現在でもニューオーリーンズの1,400を超えるレストランで楽しむことができます。

(GUMBO:ガンボスープ、濃厚だが日本人の口に合う!ご飯も嬉しい。)

シーフード料理

海に近いニューオーリンズではシーフード料理も沢山楽しめます。今回の旅ではMr Ed’s Oyster Bar-Bienbillシーフードフリッター(山盛り!)とオイスターRoyal Houseエビのラビオリクリームソースをいただきました。

揚げ物だけこんなに出てくると、味も単調になってくるし、重たく感じてきます。そこで味に変化を与えてくれるホットソースの出番。どのお店にもホットソース(タバスコ)がテーブルに置かれています。

PO-BOYサンドイッチ

今回は食べるチャンスがなかったですが、PO-BOYサンドイッチもニューオーリンズで生まれ、今や全米で食べられている非常に有名な料理です。筆者もニューオーリンズを訪れるまでここが発祥の地だとは知りませんでした。ポボーイ、プアボーイなどと呼ばれます。

PO-BOYサンドイッチとはローストビーフ揚げたエビ揚げた牡蠣などメインのトッピングともに、レタス、トマト、ピクルスなどをマヨネーズソースとともにフランスパンで挟んだサンドイッチです。

PO-BOYサンドイッチが生まれたのは1929年。ニューオーリンズの路面電車の運転手たち1,800人がストライキを起こした時、Martin Brothers Restaurantは無料で食事を提供することを約束し、地元のパン屋のJohn Gendusaに手頃な価格で心温まるサンドイッチを開発するように頼みました。

そしてストライキ中の職員が彼らのお店の裏口にサンドイッチをもらいにくると、キッチンのスタッフが「Here comes another poor boy!(またかわいそうな青年がやってきた!)」と注文を伝えたのが名前の由来です。以後他のニューオーリンズのレストランでも様々なアレンジを加えたPO-BOYサンドイッチが提供されるようになりました。

私はオイスター(牡蠣フライを乗せた)PO-BOYが大好きですが、ニューオーリンズでは多彩なPO-BOYが多くのレストランで提供されています。

PO-BOYを提供するレストランはこちらを参照。

(ニューオーリンズではないですが、筆者のお気にりのオイスターバーのオイスターPO-BOY)

仏版ドーナツ「ベニエ」とチコリーコーヒーはカフェ・デュ・モンド(Café Du Monde)へ

コーヒー好きでなくても、ニューオーリンズで必ず立ち寄りたいのがカフェ・デュ・モンド(Café Du Monde)です。アメリカにお住みの方ならロゴとイラストが入ったオレンジ色の缶入りチコリーコーヒーを見たことがある人は多いと思います。(以前は日本に出店していたこともあるようです。)

初代カフェ・デュ・モンドの創業は1862年。コーヒースタンドとしてフレンチマーケットにオープン。クリスマスとハリケーン以外は24時間営業。初期のカフェ・デュ・モンドのメニューは至ってシンプルで、深煎りのコーヒー&チコリーベニエ(Beignet: フランス版四角いドーナツ)、通常のミルクとチョコレートミルク、搾りたてのオレンジジュースだけでした。

コーヒー&チコリーにあるチコリーとはコーヒーの代用品で、チコリ根を乾燥させてすり潰し焙煎したもの。カフェ・デュ・モンドではコーヒー豆とブレンドし、ブラックコーヒーまたはオレ(Au Lait)として提供されています。オレとはご存知のとおりコーヒーと温かいミルクを半分ずつ混ぜた飲み物です。1988年にはアイスコーヒーの提供も始めました。

現在のカフェ・デュ・モンドのある建物は1812年のハリケーンの翌年に建て直されたもので、当時は肉屋のホール(Butcher’s Hall)と呼ばれていました。1930年になるとフレンチマーケットとして建物が追加され、現在は7つの建物がフレンチマーケットを構成しています。

以下が店頭にある現在のメニューですが、創業以来メニューがほぼ変わっていないところがすごい!

1942年、当時カフェ・デュ・モンドの通りの向かい側でワインセラーを営んでいたFernandez一家(現オーナー)がカフェ・デュ・モンドを買い取り、ついに1972年にはワインセラーを畳みカフェ・デュ・モンドの経営に集中することにしました。

南北戦争の最中という歴史上の大きな転換期にオープンし、オーナーが変わっても今なお人々を惹きつけているカフェ・デュ・モンド。筆者が訪問した日も行列ができていましたが、回転は割と早く20分くらい待ち、注文窓口に辿り着きました。

コロナ対策のため屋内スペースは閉鎖されており、注文窓口で商品を受け取り、屋外のテラス席に座ってフローズンカフェオレと名物のベニエ(3個入り)を頂きました。

ベニエは食べやすい一口サイズで、ドーナツの少し硬いバージョンという感じ。とっても素朴な味わいです。粉砂糖たっぷりで、甘いものが得意でない筆者は1つだけで十分でした(笑)。

ブラックコーヒーにすればよかったかな…と思ったのですが、フローズンカフェオレも人気だということでチャレンジ。普通に美味しかったですが、チコリーが入っているので、一般的なコーヒーとはまた違う、ほのか〜に漢方というか、自然の生薬の味がします。

ダークローストコーヒーの苦味とベニエの甘みの組み合わせは、観光で少し疲れたなぁと思った時や小腹がすいた時に一気にパワーをチャージしてくれます。観光の途中に立ち寄りやすいプライムロケーションもありがたい。

ニューオーリンズの街とともに歩んできたお店の歴史に思いをはせつつ、名物のコーヒー&チコリーとベニエは絶対一度は試してみる価値はあると思います。

支払いは現金のみなのでご注意ください。

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マフレッタ(Maffulettas)サンドイッチ

ニューオーリンズ名物マフレッタの歴史は1800年代後半に遡ります。その頃イタリアのシチリア島から大量の移民が到着し、フレンチマーケットのあたりが「リトルパレルモ*」と呼ばれるようになります。*パレルモ…シチリアの州都

1906年、その近所にオープンした食料品店セントラル・グロッサリーCentral Grocery and Deli)には多くのイタリア系移民労働者が、パン、オリーブ、ハムなどをランチとして買いに来ました。彼らは立ってそれらを食べるか、不安定な膝の上に載せたお皿の上で食べていました。それを見かねた同店の創業者であるSalvatore Lupo氏が、パンをお皿に見立ててサンドイッチ状にすることを思いつきます。これがマフレッタが誕生した背景です。

以下の写真でお分かりの通り、刻んでペースト状になったオリーブ、チーズとサラミ、ハムを何層か重ね円盤状のパンで挟んであります。通常は円盤型サンドイッチを4等分にカットします。切り口からのぞく具材の層がとても綺麗ですね。

マフレッタの生みの親でもあり、1906年の創業以来今も同じ場所で営業を続けているCentral Groceryのマフレッタを是非試してみたかったのですが、ハリケーンIDAにより被害を受けたお店の建物修復のため一時閉店しており、訪問できませんでした。残念。(2021年1月現在もまだ一時閉店中のようです。)

ニューオーリンズには他にもマフレッタを販売するお店は沢山あるので、今回はVerti Marteにてマフレッタをテイクアウトしました。

さびれた街角の個人商店のように見えますが、24時間営業で、夜まで遊んで小腹が空いた時にも重宝するお店。店内奥にデリコーナーがあり、マフレッタを注文できます。ここのマフレッタは具材が厚切りなのが特徴です。(既出の写真を参照)お願いすれば温めてもらうこともできるようです。今回ハーフサイズ(2スライス)をお願いしました。

ミシシッピ川沿いの眺めの良いベンチでいただきましたが、ハムやサラミ、チーズ、素朴なパンというシンプルな組み合わせにオリーブペーストの塩味が効いて、とってもおいしかったです。

何を飲む? What to drink?

アメリカの全ての州で飲酒が許可されているのは21歳以上となります。身分証明書の携帯は忘れずに。またナイトライフが充実しているニューオーリンズですが、ご自身の安全と健康のためアルコール飲料の飲み過ぎにはご注意ください。

カクテル・ハリケーン(Hurricane)

眠らない街ニューオーリンズにはバーが沢山あり、様々なお酒が飲めますが、なかでもカクテルが飲めるバーが多いことで有名。その中でもフレンチクオーターで観光客に一番人気があるカクテル「ハリケーン」を試しに、その生みの親であるパット・オブライアン(Pat O’Brien’s)バーを訪れました。

第二次世界大戦中、国内の多くの蒸溜所は戦需品を作るために使用され、国産のお酒(ウィスキーなど)の入手が困難になりました。しかしラムはカリブの国からミシシッピ川を通じて入手することができ、かつウィスキーに比べると安価でした。

このラムをなんとか活用した飲み物ができないかと、当時お店を率いていたGeorge Oechsner Jr.は仲間と一緒にさまざまな実験を重ねます。最終的に全員一致でパッションフルーツが一番合う!という結論に至りました。

伝統的なハリケーンカクテルのレシピは、ライトラム:2、ダークラム:2、パッションフルーツジュース:2、オレンジジュース:1、ライムジュース:0.5の割合で、その他シロップ等をシェイカーで混ぜ、グラスに注ぎます。そしてチェリーと薄切りオレンジを乗せます。

このグラスの形がハリケーンランプの形状に似ていることから、ハリケーンという名前が付きました。 以降パット・オブライアンバーだけでなくニューオーリンズを代表する名物カクテルとなりましたが、生誕地となった同バーではその象徴的なグラスを持ち帰ってしまう客が多発したため、グラス代金をデポジットとしてカクテル料金に上乗せして払い、グラスを返却するとデポジットが返金される仕組みだったようです。

私たちが訪れた時は、コロナの影響か上の写真のとおり、プラスティックカップでの提供だったのがとても残念でした。いつかグラスが復活するといいなぁ。味はというと、口に含んだ瞬間はフルーツジュースの甘さでグイグイ飲めてしまいそう(危険)なのですが、喉を通りすぎる時にやはりラムのちょっとしたクセとアルコールのパンチがあります。急いで飲むと一気にアルコールが回りそうな予感がしたので、チビチビ飲みました。

パット・オブライアンバーのお店の奥には中庭が広がっており、心地よい夜風とともに名物の炎の立ち上がる噴水を眺めながら、カクテルや食事を楽しむことが出来ます。普段あまりカクテルは飲まない私ですが、最高の雰囲気の中で名物ハリケーンカクテルを楽しむことが出来ました。

(中庭にある有名な炎の立ち上がる噴水)

地元のビールを試す

ニューオーリンズで訪問したほとんどのレストランで提供されていたのがABITA社のAmberビール。ABITA社はニューオーリンズの30マイル北側にあるビール製造会社です。同社のAmberは創業時からの商品で、今も一番の主力商品。ドイツのミュンヘンスタイルで作られたビールは、美しい琥珀色をしおり、口当たりがとてもスムースで少しカラメル風味もあります。

とてもすっきり飲めるのでシーフードの揚げ物や、味がしっかり目のケイジャンやクレオール料理とも相性がいいなと思いました。地元ビールはドラフト(生)でも値段が比較的お手頃なのがお財布に優しいです。せっかくニューオーリンズを訪れたなら、ぜひ一度試してみては?

ビールについては、もう少し小規模運営のマイクロブリュワリーも沢山あリます。こちらのサイトでは、飲み物のカテゴリーや雰囲気、ロケーションに応じて、バーやブリュワリーを探すことが出来ます。

お土産

最後にお土産のアイデアをいくつかご紹介。

カフェ・デュ・モンドグッズ

「何を食べる?」の章ですでに紹介しましたが、カフェ・デュ・モンドの缶入りコーヒー、ベイネを自宅で作ることができるベイネミックス、マグカップなど。定番中の定番。ほとんどの土産物屋さんや空港でも見かけました。

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タバスコなどのホットソース

ルイジアナは実はあの有名なTABASCO社の創業地でもあります。創業の翌年1867年に初めてのタバスコ、658ボトルがニューオーリンズを中心に発売されました。TABASCO社のショップがフレンチクォーターにあり、多彩なTABASCOグッズが売られています。個人的にこのミニボトルがかさばらずお土産に良いかなと思いました。(ショップの地図はこちら

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また地元のレストランで良く見かけたのが、ニューオーリンズで1923年から創業するCrystal社のホットソースです。TABASCOほど全世界に流通していないので、より希少で喜ばれるかもしれません。お土産物屋さんでも売っていました。

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Aunt Sally’sのプラリーヌ

今回は食べるチャンスがなかったのですが、空港やほとんどのお土産物屋さんで販売されていたので調べてみました。プラリーヌはプラリーネとかプラリネと呼ばれることもあるようですが、フランスのお菓子でアーモンドやヘーゼルナッツにキャラメルをコーティングしたものを焼いたお菓子です。

このAunt Sally’sが創業以来、80年に渡って主力商品である「オリジナルプラリーヌ」はルイジアナ州産のピーカンナッツ、同じく州内で獲れる砂糖きびから取れた砂糖、ミルク、バターを円形の銅の鍋で30分ほど熱してカラメル状にします。そしてバニラや他のフレーバを加えてから、スプーンで一定量取り分け、プレート上で冷めて固まるのを待ちます。(参照サイトはこちら

同社は団結の強いニューオーリンズのクレオールコミュニティから生まれ、クレオール家庭の伝統レシピを守り、保存料などを加えず作られているので、2週間以内に食べて欲しいとのことです。フレンチクォーターのお店はこちらにあります。

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筆者Skyが買った自分へのお土産

筆者はアメリカで旅行した各都市のクリスマスオーナメントを集めているので、セントルイス大聖堂をモチーフにしたオーナメントを記念に買いました。フレンチマーケットのお土産物屋さんではマルディグラなどなどニューオーリンズ名物をモチーフにしたオーナメントが売っていました。

いかがだったでしょうか?この後編では主にニューオーリンズの名物料理を中心に、それらが生まれた歴史上のエピソードや、抑えておきたい有名店を紹介しました。

この記事を執筆しながら改めて、ニューオーリンズの食文化は、世界のさまざまな国の料理が融合して生まれどこにも真似できない独自性があり、だからこそ多くの人々を惹きつけるのだなぁとますます虜になりました。まだ訪問したことのない読者の方や、食べることが好きな方、ニューオーリンズに行ってみることを是非おすすめします。

最後まで読んでいただきありがとうございます。前編と合わせ、ニューオーリンズの基本的な観光ガイドとして読者の皆さまの次の旅行の参考となれば幸いです。

 

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